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Sayaca 

Uno  (人は...)

 詩:Enrique Santos Discépolo (エンリケ・サントス・ディセポロ)

 

 

人は希望に満ちた明日を求め

苦しみが待ち受ける夢を見る

そして待ち受ける数々の残酷な戦いを知りながら

信念のために戦い続け、血を流す

人は棘の間をくぐり這っていく

そして愛を捧げたいと切望し、苦しみ、

既に心を失くして生きていることに気付くまで

人はずたずたに引き裂かれる

届かぬ口づけ、又は偽りの愛への対価として支払う罰の値段は

もう愛することも、泣くこともむなしく、

あるのはただ裏切りばかり

 

ああ、かつてあなたに捧げてしまったあの心が今の僕にあったなら

ああ、以前のように 何も未来のことなど考えず

ただ人を愛することができたのなら....

あなたのその瞳が僕に向かって、愛情を訴えながら叫んでいる

その瞳を僕のキスで 閉じてしまいたい

僕の人生を台無しにした 他の女のあの邪悪な瞳も

かつてはこのようであったことを考えないようにしながら

 

ああ、僕にかつて失くしてしまったあの心があったなら...

 

ああ、もしかつてその心が傷つけれたことを忘れ

君を愛することができるのなら

君の幻(イリュージョン)をこの胸に抱きしめよう

君の愛を想って泣くために

 

 

 

 

Yira, yira (ジーラ, ジーラ)                     

 詩:Enrique Santos Discépolo (エンリケ・サントス・ディセポロ)

 

 

運命が 女と同じように

裏切りを重ねて

お前の願いを 拒絶(はね)つける時

お前が 全くの素寒貧になって

行くあても無く 

打ちひしがれている時

お前が神を信じる気も無くし

陽に当たり干からびて行く

昨日のマテ茶の葉も無い時

お前が 食べ物のための

金を稼ごうとして

あちこち歩き回る時

見向きもしてくれない

世間の冷たさが判るだろう

 

全部嘘ばかりで 

愛などは無いのが判るだろう

世間は気にも掛けないのだから

ジーラ ジーラ

堕落(おち)た暮らしで身体を壊し

悩みで 心を蝕まれても

決して助けを求めるなよ

差し伸べてくれる手も 施しも

 

お前が 優しい胸に抱かれて死にたくて

どんなに玄関のベルを押しても

誰も答えてくれない時

お前が働き廻った後で

俺と同じように 一文無しになった時

お前が手放そうとしている衣装を

誰かがお前の傍で試し着するのを見る時

お前は思い出すだろう

昔 疲れて 聞いて貰えない叫び声をあげた

この馬鹿な男のことを 

 

*yira = prostituta =売春婦                    

 

 

 

邦訳:大澤 寛

 

 

 

 

Yuyo verde (思い出の夏草)

 詩: Homero Expósito (オメロ・エクスポシト)

 

 

遠い、遠い

あの小道 あの細道

私たちは一緒に当ても無く 歩きだそうとしていた

夏のあの空の下

空しく夢を見ながら

街灯がひとつ 大きな扉がひとつ

タンゴの歌う詩たにあるような

二人は一緒にさまよっていた

過ぎ去った夏のあの空の下で

 

 

どうか思い切り泣かせてほしい

古い別れの涙とともに

あの細道が尽きる所に

免罪のあの夏草が生えた           

 

泣いて あなたを思い出させてほしい

あなたの編んだ髪が 私を扉に結わえつける

あなたの国からは もう誰も戻って来ない

免罪の夏草があっても

 

 

何処に あなたは何処に居るのだろうか

何処へ行ってしまったのだろう

何処にあるのだろう 私の塒に残された羽は

生きて来たことの思いは そしてあの愛は

街灯がひとつ 大きな扉がひとつ

タンゴの歌う詩にあるような

そして私の両手と 

過ぎ去った夏のあの空との間に流れる

この涙

 

 

                                                    

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